技術記事

2025.10.28
技術記事

(カルレッツ®)FFKMと FKM の違い|耐薬品性・耐熱性・用途比較ガイド|Katon

(本記事は英語版からの翻訳です。)


(カルレッツ) FFKM と FKM 違い


FFKM と FKM の基礎理解

フッ素系エラストマーは、過酷な条件下でも高い信頼性を発揮するシーリング材料として、長年にわたり幅広い産業で使用されています。その中でも代表的なのが フッ素ゴム(FKM / Viton™) と パーフルオロエラストマー(パーフロ / FFKM / カルレッツ®) です。両者は同じフッ素系ポリマーに属しますが、分子構造とフッ素含有率の違いによって、化学的耐性・耐熱性・機械的特性に大きな差が生まれます。

FKM(フッ素ゴム) は部分的にフッ素化されたエラストマーで、油、燃料、多くの化学薬品に対して優れた耐性を持ちます。コストパフォーマンスと耐久性のバランスが非常に良く、自動車、化学プラント、エネルギー機器などの幅広い分野で、標準的なOリングやガスケット材料として採用されています。

一方、FFKM(パーフルオロエラストマー / パーフロ / カルレッツ®) は、すべての水素原子がフッ素に置き換えられた完全フッ素化構造を持つ高分子材料です。この高密度な分子ネットワークによって、極めて高い化学的不活性と熱安定性が実現され、ほぼすべての化学薬品に耐えることができます。さらに、300°C を超える高温環境でも長期間にわたり弾性と密封性能を維持できるため、他のゴム材料では対応できない条件下で使用されています。

FFKM は、半導体製造装置、航空宇宙推進システム、高純度化学プロセス、製薬・バイオテクノロジー分野 など、極めて厳しい環境下で不可欠なシーリング材料です。FKM と FFKM の選定は、単なるコスト比較ではなく、システムの信頼性、製造プロセスの安全性、メンテナンス頻度 に直結する重要な判断となります。



化学的耐性の比較

Oリングやシール材の選定において、最も重要な要素の一つが 化学的耐性(ケミカルコンパチビリティ) です。特に腐食性流体や反応性ガスを扱うシステムでは、材料の化学安定性がシール寿命と設備信頼性を大きく左右します。



FKM(フッ素ゴム / Viton™)の耐薬品性

FKM は炭化水素系燃料、潤滑油、酸化剤、弱酸などに優れた耐性を持ち、化学プラントや自動車エンジン、真空装置などで幅広く使用されています。特に、酸や酸化性環境での安定性が高く、中程度の温度範囲(~200°C)では優れた性能を発揮します。

しかし、強アルカリ、アミン類、熱水・スチーム環境 では、ポリマー主鎖に残る水素原子が反応を起こしやすく、徐々に劣化が進む傾向があります。そのため、強化グレードを除く一般的な FKM は、腐食性化学薬品が混在する用途には向いていません。



FFKM(パーフルオロエラストマー / パーフロ / カルレッツ®)の耐薬品性

FFKM は、化学的安定性において現行のエラストマー材料の中で最高レベルを誇ります。完全にフッ素化されたポリマー構造により、強酸・強アルカリ・アミン・ケトン・エステル・酸化剤 にも反応せず、分解や膨潤がほとんど起こりません。このため、半導体製造装置、CIP(洗浄プロセス)、化学分析装置、薬品反応槽 など、複雑で攻撃性の高い薬品を扱うプロセスでは、FFKM が唯一信頼できるシール材として採用されています。

以下は、化学的耐性の比較表です。



化学的耐性比較表

特性項目

FKM(フッ素ゴム / Viton™)

FFKM(パーフロ / カルレッツ®)

フッ素含有率

約 66% 約 72%(完全フッ素化)

酸に対する耐性

良好 優秀

アルカリ・アミン耐性

中程度(グレード依存) 非常に優秀

スチーム・熱水耐性

普通(グレード依存) 普通(特殊グレードで改善可)

溶剤耐性

中程度 優秀

まとめると、 FKM は一般産業用途で十分な耐性を持ちますが、FFKM は極限環境下や高純度が求められる工程において、最も高いレベルの化学的防御性能 を提供します。



耐熱性と温度安定性

耐熱性と熱安定性は、フッ素ゴム(FKM / Viton™) と パーフルオロエラストマー(パーフロ / FFKM / カルレッツ®) を比較する際に最も重要な要素の一つです。温度変化に対する弾性保持力や、長時間の高温暴露下での化学分解耐性は、Oリングやガスケットの寿命を大きく左右します。



FKM(フッ素ゴム / Viton™)の耐熱特性

FKM は、一般的に –20°C ~ 200°C の温度範囲で安定して使用できます。
グレードによっては 230°C 付近 まで対応可能で、熱油、燃料、潤滑剤が存在する環境下でも長期間の密封性能を維持します。
また、低温特性を改善した特殊配合もあり、寒冷環境でも柔軟性を確保できます。

ただし、高温・高酸化性雰囲気 や 化学的に反応性の高い環境(酸化剤や強酸など)では、時間の経過とともに硬化やクラックが発生する場合があります。
そのため、連続的な高温運転や極端な温度変化を伴う用途では、上位材料の検討が必要です。



FFKM(パーフロ / カルレッツ®)の耐熱特性

FFKM は、完全にフッ素化されたポリマー構造により、非常に高い熱的安定性を発揮します。
特定のグレードでは 連続使用温度が 325°C 以上 に達し、酸化環境や真空加熱プロセスでも弾性を失わずに安定稼働します。

この優れた耐熱性により、FFKM は以下のような高温用途で不可欠な材料とされています。
  • 半導体製造装置(拡散炉、プラズマ装置)
  • 化学プラントの反応槽・熱処理ライン
  • 航空宇宙機器の燃料システム
  • 高温流体・ガスシーリング部品
FFKM は高温下でも圧縮永久歪みが小さく、長期使用後も優れた密封性を維持できる点が大きな特徴です。



FFKM と FKM の耐熱性能比較表

性能項目

FKM(フッ素ゴム / Viton™)

FFKM(パーフロ / カルレッツ®)

低温限界

–20°C(特殊グレード:–40°C) –20°C(特殊グレード:–30°C)

連続使用温度範囲

–20°C ~ 200°C –20°C ~ 325°C

短期耐熱上限

約 250°C 約 340°C

熱老化耐性

良好 非常に優秀


機械的および物理的特性

FKMとFFKMはいずれも高性能なフルオロエラストマーですが、その機械的特性(引張強度、伸び、硬度、圧縮永久ひずみなど)は、ベースポリマーそのものよりも配合設計やフィラー(充填剤)の選択によって大きく左右されます。フィラーの種類、架橋構造、加工条件を調整することで、両者とも特定のシーリング要求に最適化された特性を実現することができます。

圧縮成形されたFKMは一般的に優れた機械的強度、耐摩耗性、耐変形性を備えています。多くのFKMコンパウンドではカーボンブラックや鉱物系フィラーを配合し、耐久性とタフネスを向上させており、繰り返しの動作・圧力変動・振動が発生する動的シール用途に最適です。

一方、FFKMは極めて優れた耐薬品性・耐熱性で知られていますが、その機械的強度はFKMと同等レベルであり、配合によって変化します。FFKMコンパウンドでもカーボンブラックや鉱物系フィラーが使用されることがありますが、半導体産業向けグレードでは高純度やプラズマ耐性を確保するために非金属系フィラーを採用することが多く、その場合、カーボン充填FKMよりもわずかに引張強度や引裂強度が低くなることがあります。

実際には、FKMもFFKMも用途に応じた機械的特性を設計可能ですが、その違いは想定される使用環境にあります。最終的な選択は、機械的強度を重視するか、化学的耐久性を重視するかによって決まります。



コストと供給性

商業的な観点から見ると、フッ素ゴム(FKM / Viton™) は現在でも最も幅広く使用されている高性能エラストマーの一つです。耐熱性・耐薬品性・機械的強度など、全体的なバランスに優れており、コストパフォーマンスと入手性の高さ が最大の特徴です。自動車、化学プラント、石油・ガス、食品機械など、さまざまな産業で標準材料として採用されています。

FKM は、汎用グレードから特殊耐薬品グレードまで多様なラインナップが存在し、世界中の多くのサプライヤーから容易に入手可能です。そのため、リードタイムが短く、設計変更や試作対応にも柔軟に対応できる点が利点です。

一方、パーフルオロエラストマー(パーフロ / FFKM / カルレッツ®) は、製造プロセスが非常に複雑であり、原材料の合成コストや精密な配合管理が必要なため、価格は FKM の10倍以上 となる場合があります。しかし、その優れた耐薬品性と耐熱性により、システム全体の停止や汚染リスクを回避できるため、トータルコスト(TCO)で見ると非常に効率的 です。

たとえば、半導体製造装置や化学プラントなどの高価な生産ラインでは、わずかなシール不良が大きな損失を招くため、FFKM の高価格は「保険」として十分に価値があります。また、メンテナンス周期を大幅に延長できるため、長期的なコスト削減 にも貢献します。



代表的な用途比較

実際の運用において、FKMとFFKMの違いは使用される環境や用途を見ると最も明確になります。
FKMは自動車システム、産業機械、一般化学プロセス、さらには半導体製造のサブファブ環境など、ほぼすべての産業分野で採用される汎用フルオロエラストマーです。耐久性とコストのバランスに優れ、燃料、オイル、潤滑剤などへの耐性も高いため、エンジン、油圧シリンダー、ポンプなどの動的シール用途に最適です。

一方、FFKMは通常のエラストマーでは生き残れない極限環境でその真価を発揮します。
半導体業界では、プラズマチャンバー、ウェットプロセス装置、ウエハ搬送システムなどにFFKM製Oリングが使用され、高純度と薬液・プラズマへの耐性が求められます。
また、航空宇宙・防衛分野では、高圧・高温・攻撃的な燃料という複合的ストレスに耐えるシール材としてFFKMが選ばれています。
さらに、製薬・バイオテクノロジー分野でも、FFKMは汚染防止と耐薬品性に優れており、蒸気滅菌や洗浄プロセスにも耐えることから重要な役割を果たしています。

このように、FKMは標準的な運転条件下での信頼性を、FFKMは失敗が許されない過酷環境での完全性をそれぞれ保証します。



FFKM と FKM の選定方法

FKMとFFKMの選択には、化学薬品への曝露条件と使用温度範囲の慎重な評価が必要です。
多くの産業機械システムでは、230°C以下の温度かつ一般的なプロセスケミカルを使用する環境であれば、FKMが最もコストパフォーマンスに優れた選択となります。FKMは、膨潤・圧縮永久ひずみ・薬品劣化に強く、幅広い環境で長寿命なシール性能を発揮します。

しかし、強酸・強溶剤などの攻撃的な薬品を扱う場合や、高温での連続運転が求められる場合は、FFKMが唯一の選択肢となります。FFKMは完全フッ素化構造により分子分解を防ぎ、長時間の薬液・プラズマ曝露下でも安定した性能を維持します。真空システム、クリーンルーム環境、または高価値な生産ラインでは、初期コストを上回る長期的な信頼性がFFKMの導入を正当化します。

最終的な判断は、運転環境が従来の限界を超える耐性・持久性を必要とするかどうかにかかっています。そのような条件下では、FFKMの性能優位性は他に代えがたいものです。



Katon FFKM & FKM 製品

Katon では、さまざまな産業分野の要求条件に対応するため、FKM(フッ素ゴム / Viton™) および FFKM(パーフルオロエラストマー / パーフロ / カルレッツ® 相当) の幅広い製品群を提供しています。
各コンパウンドは、温度、化学的環境、機械的ストレスに最適化されており、高信頼性 Oリング・ガスケット・カスタムシール として実績を持ちます。



Katon FKM シリーズ(フッ素ゴム)

シリーズ名

タイプ

相当グレード

主な特長

主な用途

Katon 1000 シリーズ

FKM Viton™ A(一般グレード) 優れた耐油・耐燃料性と耐熱性を持つ汎用フッ素ゴム 自動車部品、一般産業用シール

Katon 2000 シリーズ

FKM Viton™ B / F 酸・燃料・溶剤への高い耐性を備えた化学耐性グレード 化学プラント、オイル&ガス、エネルギー装置

Katon 3000 シリーズ

FKM Viton™ GFLT 低温柔軟性を強化し、寒冷環境でもシール性を維持 航空宇宙、屋外設備、低温ライン

Katon 5000 シリーズ

FKM Viton™ ETP(Viton Extreme) 広範な化学薬品と温度範囲に対応した特別配合 半導体、分析装置、混合化学系プロセス
これらの FKM シリーズは、性能・コスト・入手性のバランスが非常に優れており、標準的な高温・耐薬品用途 に最適です。



Katon FFKM シリーズ(パーフルオロエラストマー / パーフロ)

Katon の FFKM シリーズ は、極限環境下における密封性能を最大化するよう設計されたハイエンドラインです。
高温、強酸、プラズマ、真空、スチームなどの厳しい条件下で、長期間の安定したシーリングを実現します。
シリーズ名 タイプ 主な特長 主な用途
Katon 7100 シリーズ FFKM 汎用グレード。優れた耐薬品性・耐熱性を両立 半導体製造、化学プロセス、真空システム
Katon 7200 シリーズ FFKM 汎用改良型。高温安定性と薬品耐性を強化 半導体、薬品設備、分析装置
Katon 7900 シリーズ FFKM 酸化剤・強酸・H₂S・湿式環境に強い高耐薬品仕様。RGD耐性あり オイル&ガス、化学プラント、半導体ウェット工程
Katon 8000 シリーズ FFKM 高温スチーム・熱水に耐える蒸気耐性グレード CIP/SIP 滅菌装置、製薬・食品プロセス
Katon 9000 シリーズ FFKM 325°C 超の高温環境に耐える超高耐熱グレード 拡散炉、熱処理プロセス、プラズマ装置
Katon C コンパウンド(7175C / 8175C / 9075C) FFKM プラズマ・ドライ環境対応の超高純度グレード。イオン汚染を最小化 半導体前工程、真空・クリーンルーム用途

Katon の FFKM 製品は、業界トップレベルの耐薬品性・耐熱性・清浄度 を兼ね備え、半導体・化学・航空宇宙・製薬など、汚染・漏れ・ダウンタイムが許されない領域 において信頼性の高いシーリングを実現します。



 フッ素ゴム(FKM / Viton™) と パーフルオロエラストマー(パーフロ / FFKM / カルレッツ®) の違いは、単なる性能数値だけではなく、それぞれが設計された 使用環境と信頼性要求のレベル にあります。

FKM は、温度や化学薬品への暴露条件が比較的安定した一般産業用途において、最も信頼できる選択肢のひとつです。優れたコスト効率、入手性、そしてバランスの取れた機械的・化学的特性により、自動車、一般産業機器、化学プラントなどで標準的なシーリング材として広く採用さています。

一方、FFKM は、高温・強薬品・高純度要求 といった極限環境下で性能を発揮するよう設計されています。完全フッ素化された分子構造が、化学的攻撃や熱分解に対して最高レベルの耐性を提供し、汚染・ダウンタイム・シール不良が許されないプロセスで、究極の信頼性と安全性を実現します。

適切な材料を選定するには、使用条件・温度・化学的負荷・コスト性能のバランス を十分に理解することが重要です。エンジニアがプロセス条件を正確に評価することで、長期的な性能・信頼性・メンテナンスコストを最適化できます。

Katon では、最高品質基準に準拠した FKM および FFKM コンパウンド を独自開発しており、半導体・航空宇宙・化学プラント・高真空装置などの重要用途において、最高の信頼性を提供します。

失敗が許されない環境で — Katon は精密設計されたシーリングソリューションの信頼できるパートナー です。